オペレーター
テレビアニメ「平家物語」の考察です。原作は古典の軍記物語「平家物語」です
円城寺
全体的に素晴らしい出来で、山田尚子監督作品が好きな人、歴史ものが好きな人、ジブリ作品が好きな人などにおススメです
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」とほぼ同時代を扱った作品です。「鎌倉殿の13人」のスコープが鎌倉幕府サイド、特に北条得宗家の祖となる北条義時の視線なのに対して、こちら「平家物語」はスコープが平家サイドからになります。
【鎌倉殿の13人】1話感想レビュー ”源頼朝暗殺説”への伏線NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の第1話、「大いなる小競り合い」の感想レビューです。1話の内容から今後のストーリーを大胆予想します。曾我兄弟の仇討ちは、源頼朝暗殺を狙ったもので、黒幕は北条時政という説の流れになりそうな第1話。そのまま推移するのか、はたまたどんでん返しがあるのか。先が楽しみです。...
ドロシー
見比べて鑑賞すると、平家側と東国武士団側の両者の視点を補って観れるから、この時代の物語をより重層的に味わえるわよ
主人公びわ
オリジナルキャラクターびわ
オペレーター
第一話は、主人公のびわと平重盛の邂逅から殿下乗合事件までが描かれました
円城寺
主人公のびわは、この作品のオリジナルキャラクターですね
びわについて
オッドアイで、視覚的に未来の情報を知る事が出来る
父親は娘の安全を考えて、男の子として育てた
本来、名前は無く(父親から呼ばれていない)、自分で”びわ”と名乗った(琵琶が好きだから)
琵琶法師である父親は、平氏の禿(かむろ)に殺害された
禿(かむろ)について
ひとみん
アバンで登場した禿(かむろ)って、史実でも存在するの?
風雅
原作の平家物語には登場しますが、実在する可能性は低いですね。恐らく平家物語を創作した人が、面白くする為に設定したのだと思います。
円城寺
大河ドラマなどにも登場しましたね。確か、禿(かむろ)の一人が琵琶法師になって平家物語を語るんでしたっけ
禿(かむろ)・・・・・
13歳~15歳くらいの年頃の禿の頭髪の童子300人ぐらいの秘密警察。赤き直垂だと目立ち過ぎて秘密警察にならないと思うが、恐怖心を与えるのが主目的ならそれもアリ?
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オペレーター
独裁体制下にあったルーマニアの秘密警察です。国営の孤児院で孤児をセクリターテの要員に育成していたもので、体制崩壊後、育成途中の孤児たちはストリートチルドレンになりました
禿(かむろ)は、恐怖政治の象徴として扱われる
平家の栄華と反動
平家にあらざるば人にあらず
オペレーター
一方で、平家の隆盛が描写されて、平時忠が有名な「平家にあらざるば人にあらず」を言うシーンがありました
清盛、時子、重盛、知盛、維盛、徳子などが登場
清盛と時子
重盛と徳子は傍若無人ぶりに呆れる
呆れる徳子
平家の栄華は貿易から
清盛は、以下の事を重盛に告げます
- 海の上に厳島神社を創る
- 福原の海に大きな船が入れる泊りを創る(福原に移り住む)
- 宋と交易をして、富を得る。富と武力、両方を得る
(清盛)私は京を離れるが故、平家の棟梁は重盛。お前に任せる
風雅
清盛を中心とした平家は博多に日本で初めての人工港を築き、貿易で巨万の富を得ます
そして、寺社勢力を排除して瀬戸内海航路を掌握。その仕上げが福原大輪田泊(現在の神戸)への交易船の直接の乗り入れであり、これにより大宰府は存在意義を薄めて没落していく。
円城寺
交易による実益が平家に集中する仕組みが出来たわけですね
風雅
一方で、大量の宋銭が流入して、貨幣経済が発達します。但し、急激な貨幣経済の発達は経済的な混乱をもたらします
ドロシー
つまり平家は富むけど、寺社勢力は権益を失い、庶民も一時的な経済の混乱で困窮するわけね
平家が既得権益者と庶民の双方から恨まれ妬まれる事になる
平重盛とびわ
不安定な棟梁・重盛
オペレーター
一方、平氏の棟梁になった重盛ですがその地位は盤石ではありませんでした
風雅
平重盛は清盛の嫡男ですが、母親の身分が低い為、母方の一族に後見的な存在が無く、弱い立場なんですね
ドロシー
清盛が出世する前だから、最初の奥さんの身分が低かったのね
円城寺
重盛は母方の一族のバックアップは一切期待できない状態だったわけですね
風雅
清盛の次男までは同母ですが、次男はこの時すでに早逝しています。三男の宗盛からは平時子(後に二位尼と呼ばれる)の子供になります
平時子の妹は後白河法皇の皇太后平滋子(建春門院)。また弟、平時忠は権大納言と母系にも実力者がいる
重盛は宗盛と異なり母方の一族のバックアップは期待できない。棟梁と言われつつも、必ずしも盤石ではない重盛の地位
良識派として描かれる
清盛の重盛評
(清盛)お前は浮かれぬなあ。そこがよい。だが、面白うは無い。
円城寺
この辺は、原作の平家物語と一緒ですね。歴史上の人物は一概に善悪を分けられないのですが、それだと物語上メリハリがなくなるので、色分けをハッキリさせているのですね
善人、悪人を割とハッキリさせてメリハリをつける
重盛に視えるもの
その後、重盛がびわと邂逅する
(重盛)そなたは?どうやってこの屋敷に
(びわ)教えてやりにきた。お前たちは直、滅びる。ウソではないぞ
(重盛)そなた、視えるのか。私だけかと思っていたが。何が視える?
(びわ)あんたには何が視えるんだよ
(重盛)私には亡き者たちが視える。彷徨い、行き場の分らぬ者たちが。
びわとは逆の眼を塞ぐ重盛
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オペレーター
平家の侍がびわの父親を殺害した事を知った重盛は、贖罪の想いから、びわを自宅に連れ帰り世話をします
ドロシー
未来を教えて欲しいという打算もあったかもだけど、それは余り目立たない演出だったわね
重盛がびわを邸宅に連れ帰った時の、女御たちの驚きっぷりとか、セリフとかが、のんびりしていて、和やかな気分にさせてくれます
オペレーター
しかし、びわには、当然警戒感があり、重盛が如何に優しく接しようとも、二人には距離がありました
ドロシー
びわが、後ずさりしていくシーンも微笑ましくて、ほのぼのするわ
殿下乗合事件
家族同然
ひとみん
長男の維盛は優しく礼儀正しいけど、資盛は生意気でケンカばかり
アッカンベー
資盛に飛び掛かる
円城寺
武士の子供じゃないからって、バカにされるんですよね。でも険悪な感じじゃなくって、ケンカ友達って感じですね
風雅
重盛の子供たちとの絆が徐々に深まっていくのですが、悲劇と言う結論が分かっているだけに感情を揺さぶられますね
<重盛の四人の子供たち>
平維盛、平資盛、平清経、平有盛
平徳子
オペレーター
雪の季節に重盛に引き取られた、びわ。桜の季節、蛍の季節を過ぎ、紅葉の季節に何時もの通り資盛とケンカをしていると、平徳子が訪ねてきます
風雅
この辺りの四季を感じさせる描写、言葉ではなく映像で語るんですが、一方で、季節が変わると栄えるものが変わるという、盛者必衰を予感させる美しい演出ですね
円城寺
徳子の美しさに見とれるびわですが、徳子の哀しい未来も見てしまいます
美しく聡明な徳子
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事件勃発
事件の発端
資盛が、摂政松殿基房(まつどのもとふさ)の一行と行き会い時に下車の礼をとらなかった。基房の供の者が、資盛の無礼を咎めて資盛に恥辱を与えて揉め事になる
円城寺
ぼこぼこにされた資盛を見て、「子供相手にこんな事をするとは」と絶句した重盛ですが、相手が、高倉天皇の摂政という事もあって、謝罪をしようとします
ドロシー
謝罪するのを止めるのが清盛なのよね。逆に報復しちゃう
平清盛
高倉天皇の加冠の儀の為、参内する基房の行列が六波羅の武士たちに襲わる。結果、従者5人が馬から引き落とされ、4人が髻を切られる。基房が参内できなかったため加冠の儀は延期される
円城寺
これは、史実では、清盛じゃなく、重盛が報復した事になっているんですよね
史実では報復をしたのは重盛(慈円の「愚管抄」に明記)
風雅
平家物語では清盛なので、原作通りということでしょうね
- 松殿基房の兄、近衛基実と清盛の娘・盛子は結婚していた
- 近衛基実が亡くなった時、遺産は弟の基房が相続すると思われたが、清盛の謀により盛子が相続した
- 相続問題で松殿基房は、平家と確執があった
ドロシー
なるほどね。平家は色んなところで恨みを買っていたのね
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清盛の顔芸
オペレーター
この事件は、平家物語では、「平家悪行の始め」と象徴づけられます。1話は、一連の事件を知って、後白河法皇が激怒するところで終了します
盃を叩きつける後白河
山田尚子×吉田玲子
『たまこまーけっと』以来
オペレーター
本作は、テレビアニメとしては、2013年の『たまこまーけっと』以来の山田尚子監督作品です
円城寺
その間、劇場版は「 聲の形」や「リズと青い鳥」ありましたが、所謂京アニ放火事件以後は、初めての作品ですね
風雅
冒頭の平安時代の京の街。野犬がいたり、死体が放置されていたり、殺伐とした時代背景が映像で語られているのは、素晴らしいですね。それと山田尚子の特長ですが、セリフで語らず、キャラの仕草や風景の描写でキャラの心情を見せる演出は相変わらず卓越しています
卓越したキャラの心情描写
時代背景の見せ方も素晴らしい
円城寺
平家一門が家紋でよく蝶を使うんですよね。それでだと思います
四季の移り変わりで時間経過を見せながら、諸行無常も表すなど、各所に目を奪われるシーンが目白押し
ジブリっぽさを感じる
オペレーター
背景にはジブリの系統を引く「でほぎゃらりー」が関わっているようです
「でほぎゃらりー」は、スタジオジブリの制作部門が解散する際、技術の散逸を恐れた、庵野達が出資して出来たアニメ制作会社
ドロシー
それ以外にも、清盛の顔芸とか、女御の反応とか、ジブリっぽいわね
オペレーター
アニメ制作サイエンスSARUは、もう一つの平家物語と言われる「犬王」を制作中です
【考察】アニメ「平家物語」第2話 ネタバレ感想 表情を見せない演出テレビアニメ「平家物語」第2話「娑婆の栄華は夢のゆめ」の考察です。第2話は祇王に関するエピソードと、徳子の入内に関するエピソードが中心です。...