今回はサブタイトルが「氏真」ですので、家康や信長との爆笑エピソードも交えながら今川氏真の生涯について解説していきたいと思います。戦国時代の競争を放棄(戦国大名としての今川家を廃業)して、見栄や外聞も気にせず、「承認欲求」という呪縛から解き放たれて、好きな事をして悠々自適に生きる道を選んだ氏真は、人生の勝者かもしれません。
なかなかに 世をも人をも 恨むまじ 時にあはぬを 身の科(とが)にして
(「承認欲求」の虜になって、自分が世間に認められないのは、”他人の責任”、”社会が悪い”と恨んだりはしない。時代に合わなかった自分に原因があるのだから)
流転する氏真
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後北条から放逐?
「どうする家康」では妻(糸=志田未来)の実家、小田原の後北条を頼って落ち延びる氏真ですが、其処は安住の地ではありませんでした。
(糸=志田未来)の父親である北条氏康が逝去すると、風向きが変わり、再び武田と北条が同盟を結ぶようになる。その影響で、氏真の身が危うくなり、氏真夫婦は後北条から去る事になる。
糸(志田未来)も、実家である北条家を捨てて、零落する氏真を選んでいるわけですね。
今川・武田・北条の3国は、甲相駿三国同盟(こうそうすんさんごくどうめい)を結んでいました。この同盟は、当主である武田信玄、北条氏康、今川義元の娘がお互いの嫡子に嫁ぐ婚姻同盟でした。しかし、そもそも政略結婚であるため、同盟が破綻すると、武田信玄の嫡子武田義信に嫁いでいた今川義元の娘嶺松院は今川家に返され、北条氏康の嫡子北条氏政に嫁いでいた武田信玄の娘黄梅院は武田家に返されたという説もあります(こちらは否定する新説もあり)。ただ、新説の場合でも、この時点での北条家は盤石だったわけで、零落する氏真とは、ずいぶん差があります。
【氏真の勝組要素その1】
嫁が戦国大名として安定している実家よりも零落する自分を選んでくれた
ちなみにこの夫婦は天寿を全うするまで、生涯夫婦でいました。糸(志田未来)が亡くなったのは1613年。氏真は翌年の1614年に亡くなります。夫婦そろった肖像画が今も残ります。
タイミングは諸説ありますが、少なくとも氏康が亡くなって以降、家康を頼ったのは確実なようです。そして、北条家を出ていくときに詠んだ歌が「なかなかに 世をも人をも 恨むまじ 時にあはぬを 身の科(とが)にして」(「承認欲求」の虜になって、自分が世間に認められないのは、”他人の責任”、”社会が悪い”と恨んだりはしない。時代に合わなかった自分に原因があるのだから)のようですね。
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親の仇にすり寄る?
俗世の承認欲求に未練があるからなのか、家康の庇護を受けながら、信長に接近をはかります。信長に贈り物をしたり、蹴鞠を披露したりしてご機嫌をとろうとしています。
どうやら、自分を裏切った今川家の旧臣たちの足を引っ張る為のようです。
蹴鞠の名手と言われた氏真の蹴鞠に信長は大変満足したようです。ちなみに氏真の蹴鞠の師匠は、飛鳥井雅教です。蹴鞠の宗家・飛鳥井家の当主で、飛鳥井家の屋敷跡は「白峯神宮」となっており、サッカーの神様と呼ばれています。氏真が今の世に生まれていたら、メッシのようなサッカー選手になっていたかもしれません。
ただ、結局は信長と仲違いして、再び家康を頼る事になります。
ホンモノの辞世の句?
この後の氏真は、前回もご紹介した通り、長話が家康に嫌がられて、江戸城から少し離れた品川に屋敷を貰う事になります。
【氏真の勝組要素その2】
悪い部分が転じて、屋敷を貰う
そして息子たちは、武ではなく、文で認められて、高家(江戸幕府の儀式や典礼を指導する役職)を与えられて家名は存続します。
【氏真の勝組要素その3】
武田や北条が滅ぶ中、今川の嫡流は高家として存続する
そんな今川氏真の本当の辞世の句といわれているのがこちらです。
悔しともうら山し共思はねど 我世にかはる世の姿
(人に先を越されて疎んじられて、他者や世間から認められなくとも、口惜しいとも人が羨ましいとも思わない。だけど、世の中は随分変わったなあ)
この句からは一種の”悟り”の境地の様なものを感じられますね。
晩年は戦に出る事も無く、和歌や蹴鞠に興じて悠々自適な人生を過ごした模様。
いや、経済的自立をしたわけでは無いので、fireとはちょっと違うでしょうね。でも、好きな女性と生涯を共にして、悠々自適に好きな事をして生きて幸せな人生だったのかもしれません。
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臆面もなく、親の仇である信長にすり寄ったり、かつての家臣で今川家を裏切った家康を頼って、人生の勝ち組となった氏真。
プライドを捨てる事によって、「承認欲求」という呪縛から解き放たれてストレスなく77歳と言う長寿を全うできました
次回見どころ
次回は舞台を京に移して、新たな登場人物もあり、新展開の様相です。
- 足利義昭
- 浅井長政
- 明智光秀
- 茶屋四郎次郎
- 松平信康
- 五徳
- お茶々
そして、お茶々が登場するという事は、お市との再会もあります。