大丈夫だよ。あの島でのアンタがまだ少しでも残ってるなら、大丈夫だ。
オペレーター
テレビアニメ『Sonny Boy(サニーボーイ)』の第12話「二年間の休暇」のネタバレ考察です。
4話の観衆の暴動との決定的な違い
批判だらけの最終回
- 長良が希との約束を果たそうとしなかった
- 希のキャラの核心部分が真逆になっていた
風雅
①については、11話でちょっと煽り過ぎましたね。あれでは期待する人が多くても仕方ないですね
最終回への批判と4話の暴動は同列?
オペレーター
一部には最終回を批判している人たちを、「4話のモンキーベースボールで暴動を起こした観衆と同じ」と言う意見もあるようです
観たいものを観れなかったから、批判しているのか?そうではない
モンキーベースボールの審判は最初から最終回まで同じ判定基準で判定をした。その結果として、観衆が観たいものが観れなくて観衆は暴動を起こした。
サニーボーイの最終回は、ボーイ・ミーツ・ガール(Boy Meets Girl)ものアニメの核となるヒロインの、さらにキャラ設定の核となる異性を好きになる理由を180度変えてしまった。
また、作品のイントロで“SF青春群像劇”と宣言しながら、多くのキャラを放置して、少年の成長物語に特化(その他のキャラは単なる舞台装置化)した。
ドロシー
つまり、判定基準どころか、ルール若しくは競技そのものを変えるくらいのインパクトがあったわけね
多くのオーディエンスが裏切られたと思って怒ってもムリは無い。決して、「観たいものが観れなかった」から批判しているわけでは無い
円城寺
最終回まで積み重ねたものが何だったの?って怒りですよね
4話の暴動と、最終回を批判する事を同一視は出来ない
瑞穂の揺れる想い
長良を拒否した心理
瑞穂は、一旦長良を拒否するが、その後、自分から逢いに行き声をかける
ドロシー
瑞穂はさ、生き物がお亡くなりになるのが、イヤだから静止の能力を手に入れたんでしょう。それが、立て続けに祖母やとらの訃報に接して、気持ちの整理がつかなかったんでしょうね
祖母やとらの訃報を精神的に受け止めるのに時間がかかった
風雅
それで白糸第二中学に行って、気持ちに整理をつけたんですね
コップを割った意味
コップを割った意味
= 漂流前から、学校では能力が使えていた瑞穂は、帰還後でも、静止の能力が使えないか確認した
円城寺
それで能力が使えない事を確認して、気持ちに整理がついたんですね
墓地での瑞穂
風雅
墓地での瑞穂にはグッときましたね。自分が一番つらい筈なのに長良を励まして。多分、励ますために逢いに行ったんですね
泣き言を言う長良に瑞穂が気合いを入れる
(瑞穂)ここは、長良が選んだ世界でしょ。
(瑞穂)どうせ僕たちに世界は変えられないって、だから大丈夫だって、前、私に言った事覚えてる?
(瑞穂)大丈夫だよ。あの島でのアンタがまだ少しでも残ってるなら、大丈夫だ。
漂流した島で、様々な困難が有りながら、最後までやり遂げた長良。瑞穂はそんな長良を知っているから、『大丈夫』と言い切れる。
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ひとみん
でも瑞穂がネコたちを置いてまで戻った理由が解らない
円城寺
明示はされていませんが、祖母やネコたちの行く末を見守りたかったんじゃないですかね。或る意味、寿命がある元の世界の祖母や、ネコたちとは分かれている訳ですから
風雅
あれはタダの目くらましだと思います。後付けでどうにでもなる存在なので、気に掛けるだけ”果てしない徒労”でしょう
長良の成長物語としては及第点?
11話の約束の扱い
(希)じゃあこうしよう! 覚えていた方が言うことにしよう。「もう一回、友達になろう」って。ね、約束。絶対に断らないって
オペレーター
11話の約束が果たせていない事で、長良の成長物語としては失敗と言う声が多いようです
円城寺
このブログでは、約束が果たされることについて、全く最終回には期待していませんでしたね
【考察】サニーボーイ(SonnyBoy) 1~11話 振り返り 展望と感想 テレビアニメ『Sonny Boy(サニーボーイ)』も11話まで公開されました。そこで、今までを振り返り最終話の見どころを整理したいと思います...
風雅
でも、世間的には期待していた人が結構多くて、蔑ろにされた事に対する反発もママあるようですね
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風雅
確かにそこの期待の持たせ方は、マイナスポイントかも知れないですね
約束を実行する事で、一つの可能性が確定してしまう。その為、『先は長い』で先送りするのは、個人的には納得できるが、世間的には納得されないでしょう
どうせ世界は変えられないの意味
ひとみん
長良が11話から、口ぐせのように言っている、どうせ世界は変えられないってどういう意味?
風雅
これは暗示だと思います。これだけ頻繁に出てくるので、恐らくこれが作品のメインメッセージでしょうね
最近は、転移や転生で主人公に都合の良い異世界に行ったり、主人公がチートな能力で世界を変えて自己承認欲求を満たす展開の作品が目立っているので、それに対するアンチテーゼとして、世界じゃなく自分自身が変化する事によって、前に進むことが大事と言いたいのでは
円城寺
その場合、『どうせ世界は変えられない』の後に続くのは、
虚構と現実
ひとみん
エヴァンゲリオンの庵野みたいだね。虚構に耽溺せずに現実に帰れ!
この場合は、
虚構 = この世界
現実 = 元の世界
ドロシー
でも、現実は厳しいですよっていうのも前面に出ている
円城寺
そうですね。現実に帰るのをためらう人が続出したりして
「虚構に耽溺せずに現実に帰れ!」へのアンチテーゼでもあるのか・・・
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ギリギリ及第点か
風雅
前出の約束のマイナスポイントは有りますけど、長良の成長物語としては、ギリギリ及第点でいいのでは
金髪の女の子を気にするのは”果てしない徒労”
ひとみん
バイト先や、ヴォイスとの会話で出てきた金髪の女の子は?
風雅
あれはタダの目くらましだと思います。後付けでどうにでもなる存在なので、気に掛けるだけ”果てしない徒労”でしょう
群像劇としては失格
オペレーター
公式HPでは、群像劇を謳っていますが、群像劇としての評価はどうでしょうか
円城寺
長良と瑞穂以外のキャラは放り投げ状態でしたからね。とても群像劇は名乗れないですね
ドロシー
後になってから、しきりに「これは長良の成長物語」って付け足してたけど、最初から「群像劇」じゃなく、「少年の成長物語」って言わないとフェアじゃないわ
円城寺
そこ問題ですよね。どうも擁護する側からは、結論が暗いからとか、夢が無いからとか、エンタメとしての爽快感が無いからとか、価値観の違いという論点で、批判を封じようとする面が見られますが、それで批判されている訳じゃないですよね。”フェアじゃない”のが一番問題ですよね
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加賀や朝風はまんま
朝風はこの世界でも変わらず、自分を大きく見せようと虚勢を張って、中身の無さを露呈
風雅
漂流から戻って来た人間以外は、漂流の経験が無いので基本的にそのまんまでしょう
あき先生の存在意義
ドロシー
そこはご都合主義よね。あれだけ帰還したら世界が終わるって大騒ぎしてたのに
円城寺
あき先生は、子供たちが自立するのを阻害する、子離れできない存在のメタファーだったのかもしれないですね
あき先生とさくらが、対の存在か
こだまとやまびこ
オペレーター
最終回では、こだまとやまびこが同級生であることが示唆されました
ドロシー
そこも矛盾だらけよね。じゃあ、どうして8話で「初めまして」みたいな挨拶になるのよ?
円城寺
『可能性の一つ』って言われたら笑っちゃいますよね。漂流前の元の世界と、生まれた年まで異なるのかって。どこで分岐した世界なんだってかんじですね。とても元の世界とは言えないですね
希の扱いは最悪の極致
希のキャラ崩壊の問題点
ドロシー
1話からずっと積み上げてきた、希のキャラクターイメージが完全に崩壊よね
希は、尊敬できない人が嫌い。朝風は尊敬できない、だから付き合えないと明言していた。キャラクターの言動で、キャラクターの心情を理解するスタイルなのに、最終回でそれをちゃぶ台返しする理不尽さ
円城寺
しかも、10話辺りで、骨折のモノローグ使って、言動と内心に差が無いって言っておいてですからね
別モノという言い訳は通らない
オペレーター
漂流した希と、最終回の希は別モノという解釈もあるようです
風雅
その言い訳は通らないですね。コンパスが回ってますし
コンパスは目的地に着いたことを示すように回っている
風雅
コンパスは漂流した希の意志ですよ。つまり漂流した希が指向したのが最終回の世界で且つ、希の姿だという事です。つまり、11話の中で、『グレイスのイチゴが沢山のったヤツを食べて』とか言ってたのが、約束なんかよりも、彼女にとって大事な価値だったという理解でいいと思います
(ラジダニ)希はもう戻らない。でもね、彼女の意志はまだ生きている
希の意志 = コンパスが指す世界
円城寺
う~ん、そうするとホントに11話まで積み上げて来たものが何だったんだ、という感じですね。『私たちは進んでいるはず』が虚しいですね
最終回の希は、漂流した希が指向した姿
オペレーター
希を頼らず生きていけって事を希が指向しているという説は?
ドロシー
それは、そもそも約束と矛盾しているし。希は、言動と内心が一致しているって前提を変えるちゃぶ台返しよ
風雅
私は、瑞穂推しですが、さすがにこれは無いな、フェアじゃないな、と思いますね。キャラクターグッズの売り上げにも悪影響が出るかもしれないですね
ドロシー
希は、瑞穂と並んでキャラクターグッズのツートップだもんね
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キャラを崩壊させてまで伝えたかった事?
オペレーター
逆に、キャラクターグッズの売り上げに悪影響を与えるリスクを冒してまで、希のキャラをここまで破壊させて伝えたかった事は何でしょうか?
ドロシー
全然わかんない。希は独立したキャラじゃなく、長良の成長物語を語る為の舞台装置に成り下がってるわね
風雅
ひょっとすると、カワイイ女の子を偶像化する事へのアイロニーかもしれないですね
ドロシー
勝手に美化して、勝手に幻滅して、っていう思春期の男の子がよくやるヤツ?
ひとみん
でも、希の場合は勝手に作り上げたわけじゃないよね。その言動から出来たキャライメージだよ。しかも、骨折の内心を読み取るモノローグのお墨付きで
風雅
ふむ。そうですね。だから理解に苦しむ人が多いのでしょうね。
”好きな事を詰め込んだ”、との事なので、「結局、女の子なんてそんなもんだ」って言いたかったとしたら、ちょっと最悪
円城寺
希が能力遺物にならずに、長良や瑞穂のように帰還できたとしたら、って考えると、自己嫌悪で自我が崩壊しそうですね。ちょっとキャラが可哀そう
どんな最終回なら納得できた?
風雅
伝えたいメッセージにもよりますけど、①世界は変えられない。自分を変えよう②虚構に耽溺せずに現実帰ろう、でも現実は厳しい③それでも前に進もう、で長良にとってビターな結末にしたいなら、こんな感じでしょうか
〇希は、ラジダニと交際している
〇それでも長良は「もう一回、友達になろう」と希に言う
円城寺
そこはオーディエンスの想像にお任せでいいんじゃないですかね。長良が言う所で終わりの方が、余韻があっていいような気がします。
「もう一回、友達になろう」という事で、長良の成長物語としては決着が着くし、伏線も回収できる。
交際相手がラジダニなら、希はラジダニをリスペクトしていたので、言動との不整合も無い
風雅
1例ですが、伏線を放置したり、キャラクターイメージを崩壊させたりしない範囲で、いくらでもやりようは有ったと思います
全話通して
ドロシー
1話の時のテーマは「アンチテーゼ」か「連帯」か、って話だったけど、「アンチテーゼ」という結論よね
【考察】Sonny Boy(サニーボーイ) 第1話 感想レビュー テーマは「アンチテーゼ」か「連帯」かアニメーター夏目真悟が、原作・監督・脚本を担当する「青春SFサバイバル群像劇」、テレビアニメ『Sonny Boy(サニーボーイ)』の第1話「夏の果ての島」の感想レビューです。普通の異能モノと違って個性的な能力が登場します。例えば、ネコが望むものを届けてくれる「ニャマゾン」は「アマゾン」のパロディと思われます。そうした、個性的な能力を観察しながら、作品のメインテーマを考察します。また、同じ監督、アニメ制作会社、主要キャストで制作された過去の作品との関連なども分析します。...
円城寺
「連帯」は”群像劇”っていうアンフェアなミスリードに引っ掛かりましたね