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プロ野球

【プロ野球ドラフト】2018年阪神編 矢野のドラフト改革

プロ野球異聞録
オペレーター
オペレーター
プロ野球のドラフトを振り返るシリーズ。今回は、現在の阪神タイガースの状態を象徴する2018年のドラフトを阪神にフォーカスして振り返ります
円城寺
円城寺
現在の阪神タイガースの状況と言うと、こんな感じですかね

【良い点】投手王国

【悪い点】得点力不足(特に左腕に弱い)

阪神タイガースが現在のような強味、弱味を持つようになった原因が、顕著に解るのが2018年のドラフトです。

風雅
風雅
但し、翌年以降、阪神のドラフトは長期的視点に立った良いドラフトにガラッと変わっているので、どこがどう変わったのかも見ていきたいと思います

右のスラッガー不足

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指名選手

円城寺
円城寺
2018年のドラフトを見れば、阪神の得点力不足(特に左腕に弱い)の要因が分るという事で、まずは指名選手を見て見ましょう

阪神

順位 選手名 所属 守備
1位 藤原 恭大 大阪桐蔭高 左打
1位 辰己 涼介 立命大 左打
1位 近本 光司 大阪ガス 左打
2位 小幡 竜平 延岡学園高 左打
3位 木浪 聖也 ホンダ 左打
4位 斎藤 友貴哉 ホンダ 右投
5位 川原 陸 創成館高 左投
6位 湯浅 京己 BC富山 右投
指名終了
育成1位 片山 雄哉 BC福井 左打
指名終了

まず、いい点を挙げると、近本や湯浅が活躍しています。下位指名(4位以下)が活躍するのは阪神の伝統的な目利きの良さですね。金本監督以降、監督の目利きも上がっているので1位指名の活躍も多くなりました。

ひとみん
ひとみん
上位指名にピッチャーがいない・・・

それはいいのですが、その上位指名3人には共通の特徴があります。分るでしょうか?

上位指名3人には共通点がある

ドロシー
ドロシー
全員左バッター

そうです。

共通点

全員左バッター

因みに日本人の左利きの割合は、約10-12%と言われています

ひとみん
ひとみん
一般人は圧倒的に右利きの方が多いのに!

左バッターが多いと、左ピッチャーに対して不利になります

円城寺
円城寺
阪神は左バッターが多いから、左ピッチャーを苦手にしているって事ですね

ドラフト候補生に左打ちが多い理由

ドラフト候補になりそうな優秀な野手に左打者が多くなってしまう理由の背景としては、アマチュア野球の公式戦が一戦必勝型であることが挙げられます。

円城寺
円城寺
プロ野球のように年間百試合以上もすることが、無いので、一試合の勝敗への拘りが強い野球になるということですね

また、アマチュアの打者はプロのように強い打球を打てる選手が圧倒的に少ないので、1塁ベースに近くて、当たりそこないの内野ゴロでもセーフになり易い左バッターボックスに立つ左バッターの優位性が高くなります。

ドロシー
ドロシー
打球が遠くに飛ばないという事は外野手が前進守備をするから、ライトごろなんかも出やすいわね

【左バッターボックスの方が1塁ベースに近いので内野ゴロ等でもセーフになりやすく、ライトごろも防ぎやすい】

ドロシー
ドロシー
左バッターボックスの方が1塁でセーフになり易いから、アマチュアの段階で、右打ちから左打に変える人が多いって事よね。そうしないと突出した実力でもない限りアマチュアの試合で試合出場機会が得にくいケースもあるって事ね

一般人は、右利き用の道具が豊富等の理由で、左利きは不便と考えて右利きに矯正する事が多い。

逆に野球選手は左打ちの方が、1塁ベースに近くて有利なので、右打ちから左打ちにチェンジする選手も多い

オペレーター
オペレーター
もう一つの理由がこちらです

【進塁打を打つ練習の為に、一二塁間方向に打つ練習をすると、左バッターはプルスイングができるが、右バッターは当てに行くバッティングになりやすい】

円城寺
円城寺
アマの公式戦では「負けると終わり」や「負けると後がなくなる」というケースが多いから、作戦的に大量点よりも”1点をとりにいく”ケースが多く、その為に打撃練習も、進塁打を打つ練習が多く取り入れられるということですね

打撃練習で、フルスイングではなく進塁打を打つ練習をさせられると、ドラフト候補になるような強い打球を打てる右打者がアマチュアでは育ちにくい

ドロシー
ドロシー
プロでもあるわよね
風雅
風雅
コーチに指示されたわけでは無いですが、自分で考えてやってしまう例もありますね

西武ライオンズの山川選手は、駆け出しの頃、進塁打を打とうと思って、一二塁間方向に流し打ちをした際、ベンチで叱られたエピソードがあります。

『お前にそんな事は期待していない。スタンド目掛けて打て』と

ドロシー
ドロシー
右バッターは、チームバッティングの美名の元に当てに行くバッティングを練習させられて、素質が摘み取られてしまう訳ね
円城寺
円城寺
これは弊害ですね
風雅
風雅
アマチュアでは右の強打者が育ち難いので希少価値が高く、ドラフトでは意識して計画的に指名しないと不足しがちということですね

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(ドラフト戦略のポイント1)

ドラフト候補になりそうな、右の強打者は需要は高いが、需要に比較して供給が少なく希少である。それを前提に、ドラフトでは右の強打者指名を意識して戦略を練る必要がある

ドロシー
ドロシー
それをしないと、左バッターが多くなり、左腕投手に弱い打線になるってことね

阪神のドラフトの弱点

チャンスメイク型が多い

オペレーター
オペレーター
阪神が左ピッチャーに弱い理由をドラフトから読み解きましたが、得点力不足の最大の元凶は別にあります

こちらは、2018年単独よりも2017年と合わせて見た方が分かり易いので、両年の野手の指名選手をみます

<2017年ドラフトで指名した野手>

  • 熊谷 敬宥(3位)
  • 島田 海吏(4位)

<2018年ドラフトで指名した野手>

  • 近本 光司(1位)
  • 小幡 竜平(2位)
  • 木浪 聖也(3位)
ドロシー
ドロシー
スラッガータイプがいないわね。打順で言えば近本は最近3番を打っているけど、本来は1番が多いわよね

そうです。俊足で長打率が高くない、”チャンスメイク型”の選手に偏っています。勿論、チームには”チャンスメイク型”の選手も必要なのですが、バランスがとれていないですね

スラッガータイプの選手をあまり指名せず、育成にも後ろ向きの為、阪神の生え抜き選手からは打撃主要3部門のタイトルホルダーが長年出ていません。

ひとみん
ひとみん
いつから?

2005年の今岡誠の打点王が最後です。

円城寺
円城寺
15年以上出ていないのですね

移籍選手も含めると、2011年の新井貴浩(打点)、外国人選手は、2014年のマートン(打率)、ゴメス(打点)がいます

ドロシー
ドロシー
それでも随分前よね

指名が偏る理由

ひとみん
ひとみん
なぜ阪神ではチャンスメイク型の指名に偏るの?

理由は二つ考えられます

理由1:失敗したくない

一つは、「失敗したくない」という思いが強過ぎる事。チャンスメイク型は失敗が少ないです。悪くても「代走」や「守備固め」で生き残るケースが多いです。これに対してスラッガータイプは、足の遅い選手や守備の拙い選手が多く、所謂「つぶしがきかない」ケースが多いです

ドロシー
ドロシー
つまりスラッガータイプの指名にはリスクテイクする勇気が必要なケースが多い、ってことね

しかし、この『失敗が少ない』は、育成面で見るとマイナスです

ひとみん
ひとみん
どうして?

中途半端に生き残ってしまうと、支配下選手枠を圧迫して、他の選手の出場機会を奪う事になるからです。一般に野手を育成するのに、年間200打席以上の実戦経験が必要といわれています。これを与えられる選手は精々ポジション数×1.2くらいです。

円城寺
円城寺
ぎゅうぎゅう詰め」にするのではなく、ある程度の余裕が必要ってことですね
ひとみん
ひとみん
あー「鎌倉殿の13人」でも北条時政が言っていた。茄子は拳二つ分あけて植えないと育たないって

育成がポジションの取り合いと言う意味では、似ているかもしれません。ソフトバンクのように3軍があれば、話は別ですが。

理由2:「広い甲子園」という束縛

もう一つの理由は、「広い甲子園」という概念にとらわれ過ぎている点です。

ドロシー
ドロシー
昔の人は、球場が広いとパークファクターを考えて、長打力より機動力って考えがちだもんね

しかし、それも時代遅れの考え方になりつつあります。例えば今年ホームラン王を獲った村上選手は神宮球場よりも甲子園球場の方が、ホームランが出やすくなっています。日本人のスイングスピードが上がり、打撃技術が向上(フライボール革命など)した現代ではパラダイムシフトが必要になっています

ドロシー
ドロシー
つまり本物の長距離打者には球場の広さはあまり関係ないってことね

寧ろ、長打力のない選手ほど、球場の広さの影響が大きいかもしれません

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投手王国のヒミツ

注目は6位指名

円城寺
円城寺
次に阪神が投手王国を築いている要因を指名選手から見てみましょう

注目は6位指名です。

湯浅投手:ホールド、HPでリーグ1位を争う

ドロシー
ドロシー
下位指名なのに大活躍よね。でも、巨人の戸郷も6位だけど、大活躍よ

阪神タイガースの場合、下位指名の投手が主力級になることが他球団に比べて多いです。現在の主力投手で見ても、

勝ちパターンの救援投手:湯浅(6位指名)、岩崎(6位指名)、浜地(4位指名)

チーム最多勝:青柳(5位指名)

ドロシー
ドロシー
生え抜きの勝ちパターンの救援投手は、ほぼドラフト下位指名の選手よね。全体で見ても投手は上位指名より下位指名の方が活躍している印象よね

各チーム、下位指名投手が大活躍するケースは、たまにはありますが、これだけ上位指名よりも下位指名の方がコンスタントに活躍する投手が出るのは、阪神タイガース以外には、三軍があって育成で大量指名するソフトバンクホークスくらいです。

素材と育成

阪神タイガースの場合、ドラフト下位指名の投手は、2~3年位経ってから飛躍する例が多いです。好素材の投手を指名して、ファームなどでじっくり育成するパターンが阪神には合いそうです。

風雅
風雅
伊藤将のように直ぐに活躍するパターンもいますが、他球団に比べると少数派ですかね

ドラフト上位指名投手も西純や森木のように素材型を指名して、じっくり育成するパターンの方が阪神には良さそうです。

円城寺
円城寺
井川や藤川球児もそのパターンでしたね
ドロシー
ドロシー
人気球団だから、入団即活躍したらちやほやされて、浮かれてしまうかもね。しばらく、2軍で下積みした方が良いかも

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下位指名が活躍する理由

ひとみん
ひとみん
でも上位指名より下位指名の活躍が目立つ理由はどうして?

少し前まで、阪神の上位指名は、監督の要望(稀に社長案件)で即戦力として大学生や社会人の投手を指名する事が多かったからです。その時代の1位指名はそこそこ活躍する選手がたまに出るけど、エースや4番には足りない感じでしょうか。

元DeNA(及び日本ハム)のGMだった高田氏がインタビューで語っていましたが、監督って自分の任期中の事しか考えないので、すぐに使える即戦力投手を取ってくれって要望する事が多い。但し、ドラフトでは5年先、10年先を見据えて指名しなければいけないので、監督の「即戦力投手要望」には耳を貸してはいけない。

昔の阪神のドラフトで上位指名より下位指名が活躍するのは、下位指名の方が上層部の介入が少ないから

素晴らしき矢野の阪神改革

一変させたドラフト

円城寺
円城寺
最近の阪神は投手を一位指名する場合、高校生が多いですよね

西純や森木ですね。矢野監督になってから、1位指名はエース候補か4番候補を優先するようになっていますね(例外近本)。いい傾向なので、仮に監督が旧世代のOBに代わっても続けるべきでしょうね。

矢野はドラフトではエース候補か4番候補を優先した

実際に、ドラフトで指名された野手の上位指名も以下の通り長打力のある選手が野手では最上位で指名されています

<阪神の野手最上位指名選手>

2019年:井上広大

2020年:佐藤輝明

2021年:前川右京

勿論、スラッガータイプは育成が難しいです。それは阪神に限った事ではありません。例えば、広島では鈴木誠也が成功しましたが、同じ年の1位指名高橋大樹は成功していません。巨人でも岡本和真は成功しましたが和田恋はトレード。ヤクルトでも1指名の川上、2位指名の広岡らが育成できず退団やトレードになっています。

円城寺
円城寺
一人二人育成に失敗するのはどこの球団でもあるわけですね

それなのに、「どうせ育てられない」と決めつけるのが、阪神ファンの悪い癖

野手は使ってこそ育成できる

ドロシー
ドロシー
でも中村GM時代もスラッガータイプを指名したという意見もあるわよ

違いは目利きと育成ですね

中村GMの目利きには難がありました

また、阪神監督時代同様に放出選手の移籍先での活躍が目立った。

ウィキペディア(Wikipedia)『中村勝広』より引用

外国人の目利きでもゴメスを獲得しましたが、一度推薦した外国人選手を編成会議で却下されて、再度海外に視察に行き、そこでゴメスかメヒア(西武)の二択で選んだのがゴメスでした。しかも、ゴメスを選んだ理由が、「ゴメスの方が長打力があるから」でした

日本での通算成績

ゴメス:本塁打(65)、長打率(.448)

メヒア:本塁打(142)、長打率(.477)

また、和田監督時代は育成にも後ろ向きでした

<和田監督時代に入団した高卒野手>

2012年:西田直斗(前年D3位)

2013年:北條史也(前年D2位)

2014年:横田慎太郎(前年D2位)

2015年:植田海(前年D5位)

これら4人の選手が1軍で起用されたのは、たった通算1打席(北條史也)だけです

円城寺
円城寺
4年間で4人入団して、一人に一打席しか経験させていないんですね

これに対して矢野は、同じ4年間で7人入団した選手に1軍で通算275打席経験させています

風雅
風雅
野手は実戦経験が重要だから、この差は大きいですね
ドロシー
ドロシー
和田監督時代は、中村の目利きが悪かったからっていうのはないの?(中村責任論)

和田が殆ど一軍で起用しなかった選手たちですが、後任の金本が一軍で起用して結果を出しています

(例:北條史也)

和田時代は3年間でたった1打席。しかし、金本監督初年度に438打席に起用されて、打率.273の成績を残しました

円城寺
円城寺
あと5打席で規定打席(443)到達というところでしたね

高卒4年目以内にシーズン公式戦で100安打を記録したのは阪神では新庄剛志以来でした。

ドロシー
ドロシー
監督が代わって良かったわね~

高卒野手に関する中村責任論は否定される

矢野はドラフトでも育成でも自分の任期中の事よりもチームの将来の事を考えているのがわかります

日本代表に矢野チルドレンが4人!

そして先ごろ発表された侍ジャパン:野球日本代表に阪神から4人が選ばれました

ドロシー
ドロシー
阪神から選ばれる日本代表も徐々に増えている印象よね

しかも、全員矢野監督時代4年間に入団した選手たちです

ドロシー
ドロシー
そう考えると矢野監督って「ドラフトで即戦力投手を獲ってくれ!」って駄々をこねないだけ旧世代のOB監督よりマシって感じね

 

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