【良い点】投手王国
【悪い点】得点力不足(特に左腕に弱い)
阪神タイガースが現在のような強味、弱味を持つようになった原因が、顕著に解るのが2018年のドラフトです。
右のスラッガー不足
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指名選手
阪神
順位 | 選手名 | 所属 | 守備 | |
---|---|---|---|---|
1位 | 藤原 恭大 | 大阪桐蔭高 | 外 | 左打 |
1位 | 辰己 涼介 | 立命大 | 外 | 左打 |
1位 | 近本 光司 | 大阪ガス | 外 | 左打 |
2位 | 小幡 竜平 | 延岡学園高 | 内 | 左打 |
3位 | 木浪 聖也 | ホンダ | 内 | 左打 |
4位 | 斎藤 友貴哉 | ホンダ | 投 | 右投 |
5位 | 川原 陸 | 創成館高 | 投 | 左投 |
6位 | 湯浅 京己 | BC富山 | 投 | 右投 |
指名終了 | ||||
育成1位 | 片山 雄哉 | BC福井 | 捕 | 左打 |
指名終了 |
まず、いい点を挙げると、近本や湯浅が活躍しています。下位指名(4位以下)が活躍するのは阪神の伝統的な目利きの良さですね。金本監督以降、監督の目利きも上がっているので1位指名の活躍も多くなりました。
それはいいのですが、その上位指名3人には共通の特徴があります。分るでしょうか?
上位指名3人には共通点がある
そうです。
全員左バッター
因みに日本人の左利きの割合は、約10-12%と言われています
左バッターが多いと、左ピッチャーに対して不利になります
ドラフト候補生に左打ちが多い理由
ドラフト候補になりそうな優秀な野手に左打者が多くなってしまう理由の背景としては、アマチュア野球の公式戦が一戦必勝型であることが挙げられます。
また、アマチュアの打者はプロのように強い打球を打てる選手が圧倒的に少ないので、1塁ベースに近くて、当たりそこないの内野ゴロでもセーフになり易い左バッターボックスに立つ左バッターの優位性が高くなります。
【左バッターボックスの方が1塁ベースに近いので内野ゴロ等でもセーフになりやすく、ライトごろも防ぎやすい】
一般人は、右利き用の道具が豊富等の理由で、左利きは不便と考えて右利きに矯正する事が多い。
逆に野球選手は左打ちの方が、1塁ベースに近くて有利なので、右打ちから左打ちにチェンジする選手も多い
【進塁打を打つ練習の為に、一二塁間方向に打つ練習をすると、左バッターはプルスイングができるが、右バッターは当てに行くバッティングになりやすい】
打撃練習で、フルスイングではなく進塁打を打つ練習をさせられると、ドラフト候補になるような強い打球を打てる右打者がアマチュアでは育ちにくい
西武ライオンズの山川選手は、駆け出しの頃、進塁打を打とうと思って、一二塁間方向に流し打ちをした際、ベンチで叱られたエピソードがあります。
『お前にそんな事は期待していない。スタンド目掛けて打て』と
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(ドラフト戦略のポイント1)
ドラフト候補になりそうな、右の強打者は需要は高いが、需要に比較して供給が少なく希少である。それを前提に、ドラフトでは右の強打者指名を意識して戦略を練る必要がある
阪神のドラフトの弱点
チャンスメイク型が多い
こちらは、2018年単独よりも2017年と合わせて見た方が分かり易いので、両年の野手の指名選手をみます
<2017年ドラフトで指名した野手>
- 熊谷 敬宥(3位)
- 島田 海吏(4位)
<2018年ドラフトで指名した野手>
- 近本 光司(1位)
- 小幡 竜平(2位)
- 木浪 聖也(3位)
そうです。俊足で長打率が高くない、”チャンスメイク型”の選手に偏っています。勿論、チームには”チャンスメイク型”の選手も必要なのですが、バランスがとれていないですね
スラッガータイプの選手をあまり指名せず、育成にも後ろ向きの為、阪神の生え抜き選手からは打撃主要3部門のタイトルホルダーが長年出ていません。
2005年の今岡誠の打点王が最後です。
移籍選手も含めると、2011年の新井貴浩(打点)、外国人選手は、2014年のマートン(打率)、ゴメス(打点)がいます
指名が偏る理由
理由は二つ考えられます
理由1:失敗したくない
一つは、「失敗したくない」という思いが強過ぎる事。チャンスメイク型は失敗が少ないです。悪くても「代走」や「守備固め」で生き残るケースが多いです。これに対してスラッガータイプは、足の遅い選手や守備の拙い選手が多く、所謂「つぶしがきかない」ケースが多いです
しかし、この『失敗が少ない』は、育成面で見るとマイナスです
中途半端に生き残ってしまうと、支配下選手枠を圧迫して、他の選手の出場機会を奪う事になるからです。一般に野手を育成するのに、年間200打席以上の実戦経験が必要といわれています。これを与えられる選手は精々ポジション数×1.2くらいです。
育成がポジションの取り合いと言う意味では、似ているかもしれません。ソフトバンクのように3軍があれば、話は別ですが。
理由2:「広い甲子園」という束縛
もう一つの理由は、「広い甲子園」という概念にとらわれ過ぎている点です。
しかし、それも時代遅れの考え方になりつつあります。例えば今年ホームラン王を獲った村上選手は神宮球場よりも甲子園球場の方が、ホームランが出やすくなっています。日本人のスイングスピードが上がり、打撃技術が向上(フライボール革命など)した現代ではパラダイムシフトが必要になっています
寧ろ、長打力のない選手ほど、球場の広さの影響が大きいかもしれません
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投手王国のヒミツ
注目は6位指名
注目は6位指名です。
湯浅投手:ホールド、HPでリーグ1位を争う
阪神タイガースの場合、下位指名の投手が主力級になることが他球団に比べて多いです。現在の主力投手で見ても、
勝ちパターンの救援投手:湯浅(6位指名)、岩崎(6位指名)、浜地(4位指名)
チーム最多勝:青柳(5位指名)
各チーム、下位指名投手が大活躍するケースは、たまにはありますが、これだけ上位指名よりも下位指名の方がコンスタントに活躍する投手が出るのは、阪神タイガース以外には、三軍があって育成で大量指名するソフトバンクホークスくらいです。
素材と育成
阪神タイガースの場合、ドラフト下位指名の投手は、2~3年位経ってから飛躍する例が多いです。好素材の投手を指名して、ファームなどでじっくり育成するパターンが阪神には合いそうです。
ドラフト上位指名投手も西純や森木のように素材型を指名して、じっくり育成するパターンの方が阪神には良さそうです。
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下位指名が活躍する理由
少し前まで、阪神の上位指名は、監督の要望(稀に社長案件)で即戦力として大学生や社会人の投手を指名する事が多かったからです。その時代の1位指名はそこそこ活躍する選手がたまに出るけど、エースや4番には足りない感じでしょうか。
元DeNA(及び日本ハム)のGMだった高田氏がインタビューで語っていましたが、監督って自分の任期中の事しか考えないので、すぐに使える即戦力投手を取ってくれって要望する事が多い。但し、ドラフトでは5年先、10年先を見据えて指名しなければいけないので、監督の「即戦力投手要望」には耳を貸してはいけない。
昔の阪神のドラフトで上位指名より下位指名が活躍するのは、下位指名の方が上層部の介入が少ないから
素晴らしき矢野の阪神改革
一変させたドラフト
西純や森木ですね。矢野監督になってから、1位指名はエース候補か4番候補を優先するようになっていますね(例外近本)。いい傾向なので、仮に監督が旧世代のOBに代わっても続けるべきでしょうね。
実際に、ドラフトで指名された野手の上位指名も以下の通り長打力のある選手が野手では最上位で指名されています
<阪神の野手最上位指名選手>
2019年:井上広大
2020年:佐藤輝明
2021年:前川右京
勿論、スラッガータイプは育成が難しいです。それは阪神に限った事ではありません。例えば、広島では鈴木誠也が成功しましたが、同じ年の1位指名高橋大樹は成功していません。巨人でも岡本和真は成功しましたが和田恋はトレード。ヤクルトでも1指名の川上、2位指名の広岡らが育成できず退団やトレードになっています。
それなのに、「どうせ育てられない」と決めつけるのが、阪神ファンの悪い癖
野手は使ってこそ育成できる
違いは目利きと育成ですね
中村GMの目利きには難がありました
また、阪神監督時代同様に放出選手の移籍先での活躍が目立った。
ウィキペディア(Wikipedia)『中村勝広』より引用
外国人の目利きでもゴメスを獲得しましたが、一度推薦した外国人選手を編成会議で却下されて、再度海外に視察に行き、そこでゴメスかメヒア(西武)の二択で選んだのがゴメスでした。しかも、ゴメスを選んだ理由が、「ゴメスの方が長打力があるから」でした
日本での通算成績
ゴメス:本塁打(65)、長打率(.448)
メヒア:本塁打(142)、長打率(.477)
また、和田監督時代は育成にも後ろ向きでした
<和田監督時代に入団した高卒野手>
2012年:西田直斗(前年D3位)
2013年:北條史也(前年D2位)
2014年:横田慎太郎(前年D2位)
2015年:植田海(前年D5位)
これら4人の選手が1軍で起用されたのは、たった通算1打席(北條史也)だけです
これに対して矢野は、同じ4年間で7人入団した選手に1軍で通算275打席経験させています
和田が殆ど一軍で起用しなかった選手たちですが、後任の金本が一軍で起用して結果を出しています
(例:北條史也)
和田時代は3年間でたった1打席。しかし、金本監督初年度に438打席に起用されて、打率.273の成績を残しました
高卒4年目以内にシーズン公式戦で100安打を記録したのは阪神では新庄剛志以来でした。
高卒野手に関する中村責任論は否定される
矢野はドラフトでも育成でも自分の任期中の事よりもチームの将来の事を考えているのがわかります
日本代表に矢野チルドレンが4人!
そして先ごろ発表された侍ジャパン:野球日本代表に阪神から4人が選ばれました
しかも、全員矢野監督時代4年間に入団した選手たちです